院長ブログトップ心と体に渡る病気

‘心と体に渡る病気’ カテゴリーのアーカイブ

東日本大震災に被災された皆様には心よりご冥福とお見舞いを申し上げます。3月11日の震災から1ヶ月以上経過しましたが未だに余震が続きまた大きな地震が起こるのではないかという不安感や放射能問題は大丈夫なのかという不安感をお持ちの方がおられると思います。またその影響で夜の睡眠も寝付きが悪い、眠りが浅い、夜中に何度か起きる、朝早く目が覚めるといった典型的な不眠状態になられている方も多くいらっしゃると思います。また余震が多いため船酔いのように内耳の三半規管の異常が起こり地震酔いが抜けなくて日々悩んでいる方も多いことでしょう。このように不安、不眠、身体不定愁訴(めまい、頭痛、吐き気、胃もたれ、動悸、下痢、全身倦怠感等)が長く続くと、うつ状態に発展する場合もあり、日々の日常生活の中での気分転換や心の安らぐ生活環境や安心できる対人関係を自分で意識して作っていくことが症状改善のために必要であると思います。それでもどうしても症状が改善しない場合は不安、不眠、うつの治療を心療内科で迅速に行い必要最低限の薬物療法と個別の性格特性に合わせた精神療法で本来の自分自身を1日も早く取り戻して心身共に健康に暮らしていけるようにすることが重要であると思います。

ページの先頭へ移動

通勤の満員電車や人が多い閉鎖空間、オフィスや学校の教室等で最初は食事前で空腹でお腹が鳴ることが恥ずかしい、少しお腹が動いてガスや便意がありそれを少し我慢する程度のことであったのに、それを意識する時間の経過で徐々に症状がエスカレートし自分が意識した苦手な場所で腹痛が起こり、ガスや便を公衆の場で失禁してしまうのではないかという恐怖感に悩むことがあります。このため苦手な場所を避けて通勤電車を途中下車したり(回避行動)、そこでまたガスや下痢発作が起きたらどうしようと悩む(予期不安)が起こり、日常社会生活に支障を来してしまうことがあります。これは「過敏性腸症候群」という腸管運動の機能異常の病気です。脳内のメカニズムはパニック障害と非常に似た動態になっていて大脳扁桃体の過敏反応から脳幹の青斑核を経由して自律神経発作が起こり、その対象臓器が大腸であるわけです。治療は脳の過敏反応を抑えて大腸の過敏反応を抑えるというダブルターゲットの治療になりますが、男性であれば治療専門薬のイリボーは保険適応の薬です。女性の場合はイリボーが保険適応ではないので脳と大腸の過敏を押さえる薬をそれぞれ使い、結果的にダブルターゲットの治療にします。男性でも症状が強い場合は多剤併用になる場合があります。ただし苦手な場面でなくても終日慢性的に腹痛や下痢発作がみられる、血便や発熱を伴っている、腹痛が排便後に軽快しない、体重減少があるというような場合は消化器内科での精密検査(大腸内視鏡検査)を行う必要があります。確率は低いですが腸管の器質疾患である「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」が見つかる場合があり、この場合は消化器内科で専門治療を行わないと問題は解決しません。過敏性腸症候群は先の述べたとおり薬物療法も大切ですが発症原因が腸管過敏だけではなく元来の不安を感じやすい性格や現実生活のストレスが非常に関与しているのでこの社会的ストレスを減らし心理面の不安感や考え方を整理していくことが心療内科における治療においては重要になってくると思います。

ページの先頭へ移動