主な疾患


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不安障害(主に不安状態を呈するもの)

適応障害

明らかな心因(ストレス原因)に基づいてうつ状態、不安状態、不眠状態などの精神症状や身体不定愁訴(全身倦怠感、めまい、頭痛、吐気、胃痛、下痢等)を引き起こすものをいいます。日常生活においては転居、妊娠、出産、結婚、離婚等の生活環境の変化や就労に関しては異動、転勤、新就職、過剰労務、労務内容の不適合、職場の人間関係などを心因としてこのような状態に陥る方は非常に多く、たとえ症状がまだ軽症であっても患者様が症状に困っており、日常生活や就労上何らかの支障が生じれば治療の対象となります。症状の程度は個人差がありますが早期の心因の調整や回避、または薬物療法で症状が軽快する方が多いので無治療で放置して症状が重症化しうつ病に発展する前に早期発見や早期治療が必要になります。薬物療法に関しては軽症の段階では抗不安薬や睡眠薬で症状が軽快しますが重症化しうつ病に発展した場合は抗うつ薬を継続内服する必要があります。

社会不安障害(SAD)

社会や集団の中で他人に注目される恐怖が中心で、その苦手な社会的状況を自分から避けるようになるものをいいいます。従来は対人恐怖症と言われていたもので、男女とも青年期に発症し、元来自己評価が低く他人に否定されることを恐れる人に多くみられます。会議や申し送りやプレゼンテーション、あるいは顧客対応や電話対応などの対人接触の多いその人にとっての苦手な環境で症状が出現し、強い動悸や息切れ、手や足の震え、手の平や脇の下の異常発汗、めまいなどの自律神経症状が主体で思考が混乱し頭の中が真っ白になり、日常生活や業務対応が困難となることが一般的です。症状の程度や頻度で治療方針を決めますが、SSRI(セロトニン選択性再取り込み阻害剤)などの薬物療法で症状が完全に消失する方から症状は軽度残るが日常生活や就労上問題がなく過ごせるようになる方がほとんどです。当院では薬物療法と併行して行動療法(暴露訓練)も行います。現代では対人緊張症は性格的な問題とは考えずに脳の扁桃体におけるセロトニンのバランス異常の病気と考えられています。

パニック障害

今まで全く普通に問題なく生活してきた人がある日突然激しい動悸や息切れ(場合によっては過呼吸発作)などのパニック発作が起こり内科や救急病院に緊急受診し担当医から検査上異常なしと言われて帰宅するが、あまりの恐怖体験であったため、また発作が起きたらどうしようという「予期不安」がその後も頻回に起こるようになりこのことが頭にこびりついて離れなず徐々に気分が落ち込み夜も眠れなくなることがあるような病気です。初発が通勤の満員電車や人混みなどの特定の場所で起こった場合はその苦手な場所だけに予期不安や緊張を感じる「広場恐怖」を伴うことがあり、その場所を回避する「回避行動」があるのも特徴です。就労者が満員電車で発症して「頻回の発作」や「予期不安」に悩まされて通勤手段の「回避行動」をとるようになると出勤することが出来なくなり就労問題に発展します。この病気も社会不安障害と同様に性格の問題ではなく脳の扁桃体のバランス異常の病気と現代では考えられているため、SSRI(セロトニン選択性再取り込み阻害剤)を中心とした薬物療法でほとんどの発作は消失させることができます。症状に広場恐怖を伴う場合は当院では行動療法(暴露訓練)も行います。強い不安症状はありませんが慢性的な漠然とした軽度の不安感が終日継続するような「全般性不安障害(GAD)」という不安障害もあります。これは抗不安薬を中心とした薬物療法で症状が軽減されることが多いですが症状の内容や程度に応じて個別に治療方針を決定します。

強迫性障害(OCD)

強迫観念と強迫行為の反復が主な症状で手洗い不潔恐怖や戸締まり確認恐怖などが代表例です。手洗い不潔恐怖を例に挙げると自分の手が不潔であるという認識(強迫観念)を自分で打ち消そうとしても頭から離れずに、自分ではばからしいという自覚があるにもかかわらず、不潔であることが恐ろしくて1日に何十回も手を洗う行為(強迫行為)を繰り返してしまうような疾患です。強迫行為はなく嫌な考えや嫌なイメージなどの強迫観念だけが頭に頻回に浮かぶことに悩む方もいます。そのまま症状を放置するとうつ状態になる方も少なくなくありません。薬物療法で症状の程度が緩和することが多いのでひとつの治療法であると思います。また「ひらきなおりの精神」の森田療法を併行することも精神療法としては重要です。

身体表現性障害

内科・整形外科・婦人科等の診察や検査によって異常がなく「体の病気が存在しない」という事実があるにもかかわらず、多数の身体症状を慢性的に長期間に持たれているものを「身体化障害」といい、身体的に検査上異常がないのにもかかわらず自分は重篤な体の病気にかかっているのではないかという考えにとらわれて多数の医療機関を受診したりするものを「心気障害」といいます。どちらも身体症状の他にうつ状態や不安状態や不眠を伴うことが多く精神症状に対する薬物治療をすることで結果的に身体症状が軽快する場合があり治療効果には個人差があります。一般的によく見かけるのは「慢性疲労症候群」や「心身症」といわれるような状態で日常生活や就労上ストレスが原因で心身の疲労が慢性的継続することが原因で身体検査上異常がないが、頭痛、頭重感、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、吐気、胃痛、下痢、不眠などの身体不定愁訴が慢性的に継続しなかなか改善しないような状態です。この場合は心身両面の薬物療法により症状が緩和することが多いように思いますが「ひらきなおりの精神」の森田療法を併行することも治療結果に繋がる重要なポイントです。

気分障害(主にうつ状態または躁状態を呈するもの)

うつ病

日常生活や人間関係や就労問題等の生活上のストレスを契機や誘因として発症する脳内の化学伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンやドーパミン)のバランスの崩れた状態であり、主に前頭葉が障害されて2週間以上終日連続した気分の落ち込みや物事への興味や関心がなくなることが主な症状です。また日常生活や勤務において何事にも意欲がなくなり思考力や集中力や決断力が低下し、自己評価も低下してすべてに自責感を感じるようになり、食欲や睡眠の異常(食指不振や過食、不眠や過眠)や全身にわたる体の不調(身体不定愁訴)等がみられる疾患をいいます。抗うつ薬を中心とした薬物療法と認知療法を軸とした精神療法と日常生活や就労に関する生活指導が治療上必要ですが、必要があれば休職しご家族や職場の上司や人事労務担当者の病気に対する理解と協力も再発防止対策上必要になります。診断上元来の性格人格特性や身体疾患と常用薬剤と嗜好品の有無、過去の躁状態の有無等の鑑別診断が治療導入時の将来の治療効果を左右する治療方針決定の決め手となるので病名のみの診断では十分な治療効果は得られません。当院ではこのような疾患背景の個人特性の確認や心身両面の鑑別診断を十分に行い的確に診断と治療を行うように心がけています。

双極性感情障害(躁うつ病)

うつ状態の既往だけでなく過去に一度でも躁状態(気分の高揚、気力や活動性の亢進、多弁多動、不眠傾向)の診断基準を満たす症状があればうつ病ではなく双極性障害の診断となります。この場合は抗うつ薬の治療単独では容易に躁転してしまうので感情調整薬や非定型抗精神病薬を用いて薬物療法を行い必要に応じて定期的に薬剤血中濃度を測定しながら、再発防止対策上薬物治療を継続していく必要があります。躁状態の程度により双極1型と2型に分類でき、診断基準は満たすほどの症状ではなくても軽躁状態や軽うつ状態が2年間以上慢性的にみられるものを気分循環症といいます。当初にうつ病と診断しても後から双極性感情障害に診断変更されることは精神科医療機関では一般的には多いことで平均8年はかかると言われておりますが、当院では過去の病歴や治療後の症状経過や再休職の有無等から出来るだけ早期に双極性感情障害であることを発見できるように心がけて日々診療しています。

気分変調症

うつ病の診断基準を満たすほどのうつ状態はありませんが、軽うつ状態が長期に慢性的に継続しているものを気分変調症といいます。この状態で何らかの原因でうつ状態がもう一段悪化してうつ病相当に陥ったものを「ダブル・デプレッション」といいます。治療内容はうつ病に準じた薬物療法と精神療法を行います。

睡眠障害(主に不眠を呈するもの)

神経症性不眠(不眠症)

何らかの事情で不眠が出現し「また今晩眠れなかったらどうしよう」という不安や恐怖で不眠が慢性再燃し生活や就労に支障をきたすものを神経症性不眠と言います。本来不眠というのはその方にとっての睡眠時間の短縮と朝覚醒時の不満足感をいいます。不眠は
① 寝付きが悪い  ② 夜中に目が覚める
③ 朝早く目が覚める  ④ 眠りが浅い

という4つパターンに分類されて、そのタイプや重複状況、さらにその他の精神症状の有無により、睡眠効果のある薬剤の薬物療法を主に行います。しかし不眠の症状だけにとらわれず、他の精神疾患の有無や身体基礎疾患や嗜好品の有無や生活習慣の問題も十分に考えながら、その方に有効な改善策を森田療法や認知療法を用いた精神療法や生活指導(睡眠改善12箇条)も含めて講じていくことが最も適切な治療法となります。

この他にも各種依存症や認知症などの数多くの精神科関連疾患がございますが、当院はすべての精神科関連疾患には対応はできておりませんのであらかじめご了承ください。

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